惑星の温室効果(1)

地球の気温ってどうやって決まってるの?ほかの惑星は?みたいなことを統一的に解説してみるテスト。

惑星は開放系

惑星は外界との物質的なやり取りはない。たまに隕石が落下することがあるが、これは例外的だ。従って、惑星は物質的には孤立系だ。

一方、惑星は外界とエネルギー的なやり取りがある。太陽からの放射を受けて暖まり、暖まった熱を赤外線で宇宙に放射している。したがって、惑星はエネルギー的には開放系だ。

平衡温度、有効温度、地表温度

温度には色々なものがある。ここでは「平衡温度」、「有効温度」、「地表温度」の3種類の温度を考えよう。面倒な説明は後回しにして、それぞれ次のような分布になる*1 *2

水星と火星は3つの温度が一致して図では3つの丸印が重なり、金星と地球では有効温度と平衡温度が重なって表示されている。

平衡温度

惑星は放射の出入りがバランスしていて、放射平衡にある。太陽から可視光線を吸収し、惑星は赤外線を宇宙に放射している。前者と後者が釣り合い、惑星の温度は一定に保たれている。平衡温度は、この釣り合いのもとで、惑星の放射が黒体放射と等価であると仮定したときの温度である。したがって、平衡温度は理論的な温度である。

惑星は太陽光をすべて吸収するのではなく、ある割合で太陽光を反射している。この反射率をアルベドと呼ぶ。理想的なモデルとして、図にはアルベドがゼロの場合(受けた太陽光をすべて惑星が吸収する場合)を青い曲線で示す。太陽から近い惑星ほど平衡温度は高く、遠いほど平衡温度は低い。これは、太陽から近いほど強い太陽光を受けるので、惑星は暑いという単純な結果を再現している。地球の場合は5.3℃になる。

現実の惑星は雲などによって太陽光を反射するため、アルベドはゼロではない。アルベドを考慮した平衡温度をで示す。

金星は濃い大気のためにアルベドが大きい。金星を外から見るとテカテカに見える。この大きなアルベドのために、平衡温度は青い曲線よりも100℃も低い。もし温室効果がなければ金星は極寒の世界になってしまう。地球よりも寒い。

地球のアルベドは30%程度で、平衡温度は約-18℃である。「もし温室効果ガスがなかったら、地球の気温はマイナス18℃」というフレーズはここから来ている。アルベドを30%としたままで温室効果だけを取り去ることはできないので、このフレーズは全くの空理空論だ。

有効温度

有効温度とは、観測される惑星の放射を等価な黒体放射と仮定したときの黒体放射の温度である。したがって、有効温度は観測的な温度である。図中でプロットした。

有効温度は平衡温度よりも高い。有効温度と平衡温度の差は、惑星内部に存在する熱源の寄与だ。たとえば、木星の有効温度は平衡温度よりも有意に高い。木星は、その形成時の余熱をまだ放射し続けていて、内部から暖められているのだ。

地球にも地熱があり、そのぶんだけ有効温度は平衡温度よりも高い。ただしその量はとても小さい。太陽光からのエネルギーに比べて地熱は無視できるほど小さいのだ。したがって、地球の有効温度と平衡温度はほぼ一致する。

地表温度

最後は地表温度だ。図中でプロットした*3

地表温度は有効温度よりも高い。この差は主に温室効果の寄与が原因だ。つまり地表温度と有効温度の差だけ温室効果が効いている。

金星は高いアルベドにより平衡温度と有効温度が極端に低いが、強力な温室効果により地表温度が極端に高くなり、500℃近くにもなる。高いアルベドも強力な温室効果も、両方とも濃い大気が原因であることに留意したい。つまり、濃い大気は温度を下げる効果もあるし、上げる効果もある。この競合関係は多くの場合、温度を上げるほうが勝つ。

地球はほどほどの温室効果により、マイナス18℃の有効温度をプラス15℃の地表温度まで上げる。

温室効果

下図は地表温度と有効温度の差、つまり温室効果を示す。

うーん。金星さんぶっちぎり。

惑星の温度を決めるもの

惑星の温度を決める主な要因は以下の3つ:

ほかには

  • 内部熱源

もおまけしておく。

次回は数式で上記のことを説明しようかな。

*1:Planetary Fact Sheets

*2:理科年表-プレミアム

*3:木星型惑星については、気圧が1barの温度をプロットした