「科学者の9割は地球温暖化CO2犯人説はウソだと知っている」は本当か?

最近、科学者に対して気候変動の科学的な理解とスタンスに関するアンケートが行われた。アンケートの〆切が過ぎたので、このエントリーで紹介することにする。

このアンケートを主催しているのは国立環境研究所と某私立大学で、環境省からの某予算を財源として行われているプロジェクトの一環である。ボクが所属している某団体のメーリングリストにも、アンケート調査への協力依頼に関するメールが流れた。ボクも当然アンケートに協力した。協力の理由は面白そうだったから。

このアンケートには、回答者の属性(気候変動の専門家、一般の科学者、学生など)も答えることになっていた。今後、回答者の属性に基づいたクロス集計も行われるだろう。公的資金を使ったプロジェクトなので、結果は公開だれるだろう。結果が楽しみである。

ボクの個人的な印象

アンケートの集計結果が待ちきれないので、ボクの周囲の人々から感じた印象を元に下図を作成してみた。

この図は、ボクの周囲の人々をサンプリングしている。サンプル数が少なかったり、偏りがあるかもしれない。さらに、脳内補正が効いているかもしれない。参考のため、3名の有名人(江守正多、赤祖父俊一、武田邦彦)もプロットした。もちろん、プロットの基準はボクの独断と偏見である。もし、ご本人がご覧になって気分を害したならご容赦いただきたい。なにぶん遊びなのだから。

他にも微妙な有名人がいるので、実名でプロットしたいところだが、いろいろとググられるとボクの身元がバレる可能性があるので、「知人[A-C]」としてプロットさせてもらった。

bold;">横軸:気候変動における立ち位置。IPCCのような人為的要因による地球温暖化を支持するなら「主流派」とした。一方、それ以外の考えを支持するなら「亜流」とした。「亜流」にも色々あり、(1)そもそも地球は温暖化していない、(2) 温暖化は自然要因によるもので人為的なものではない、(3) 温暖化はCO2が原因ではない、(4) そもそもCO2には温室効果がない、など様々であるが、ここではザックリと亜流とさせてもらった。
bold;">縦軸:科学的な理解力。地球温暖化は多様な領域を横断する学際的な研究対象である。それらの多様な領域に対する理解を1次元的に評価するのは難しい。したがって、ここでは気候システムにおける主に物理学を中心とする理解力とした。科学的な理解力があるからといって必ずしも気候変動に関して主流は(人為的地球温暖化)を支持する結果にはならないと個人的には思う。現在のところ正解は誰も知らないのだから。
ちなみに、ボクは主流派を支持している。理由は簡単で、科学的に理解が進んでいる側を支持するからだ。亜流の方は科学的な理解が不足しており、積極的に支持するのに足る根拠がまだない。健全な科学のためには、亜流にも頑張って欲しい。ボクが気候変動の分野に進出するとしたら、間違いなく亜流に手を染めるだろう(笑)。

近い分野の人に懐疑派が多い

それぞれ分類別に説明する。

bold;">研究者(専門分野):気象学の人はほとんど主流派である。気象の分野は硬い分野なので、亜流を認めない雰囲気もあるのかもしれない。気象学は今でこそ気候変動バブルだが、そもそも定例業務で天気予報をしたり、軍事と関係したり、気象大学校があったりする分野である。カチカチの硬派だ。
一方、専門分野の研究者でも主流派ではない人達もいる。たとえば、古気候学の分野には、亜流の研究者が多いように思える。彼らは樹齢1000年以上の木を調べたり、南極の氷床をボーリングしたりして、比較的長いスケールの気候変動を調べている。業界の雰囲気も自由な感じ。最近のクライメイトゲート事件で、再び話題になったホッケースティックのマイケル・マンも古気候学の人だが、彼は主流派である。
bold;">研究者(近い分野): 地球科学、惑星科学、太陽物理学などの分野が該当するだろう。これらの分野では、化学・流体力学・放射、ミクロな物理からマクロな物理までなんでもアリの総合問題を扱う。この点においても気候変動の分野と似ているといえるだろう。この分野の研究者には、主流派の人はもちろんいるが、亜流の人も結構多い。
図中にプロットした赤祖父俊一さんや例の本の著者である丸山茂徳さんも、ここに分類される。赤祖父さんの本来の専門はオーロラで、丸山さんの本来の専門は固体地球である。もっとも彼らの著作を読むと、彼ら自身でデータを扱ったり物理的な考察をしているわけではないようだ。学会の質疑応答で反対意見を述べたりするスタンスに似ている。彼らは研究者としての勘で判断している。「何だ、勘かー」と思うかもしれないが、老練な研究者の勘を侮るなかれ。意外に当たることがある(もちろん、外れることもある)。また、丸山さんの研究グループは、これから地に足をつけた研究を計画しているようで、今後が楽しみである。
bold;">研究者(一般): その他の分野を専攻する研究者一般をここに分類した。いろいろな分野の研究者がいるので、十把一絡に扱うのは乱暴かもしれない。
前のエントリーでも書いたが、ボクの印象では、化学・物性・工学関係の研究者には勘違い君が多い。有名どころでは、武田邦彦さんがこの典型例だと思う。彼の専門分野は資源材料工学だ。ペットボトルのリサイクルに関する議論がヒットしたのに気をよくして、環境分野に乗り出して勘違いしている。彼のように、工学系から環境分野に進出する研究者は結構多い。本来の専門に軸足を置いていれば良いのだが、まったく畑違いの地球温暖化に事業拡大すると勘違い君になってしまうので、要注意だ。
bold;">学生:とくにコメントなし。
bold;">一般人:ネット関係は例外かもしれないが、普通の一般人の科学リテラシーは恐ろしい程に低い。市民の科学リテラシーを研究している人に以前話を伺ったことがあるが、普通の人は地球温暖化には高い関心を示すものの、そもそもなぜCO2が温室効果を持つのかを知らないひとがほとんどだという。まあ、ボクが肌で感じる印象と一致している。一番身近なところの例では、ボクの母親は「エアコンの排熱は地球温暖化の原因」と考えていたし、そもそも他の環境問題と地球温暖化の区別が付いているか怪しい。今度、原子力発電の推進は地球温暖化対策になること指摘したいと思う。きっとびっくりするだろう。

しかし、ここブックマークを見ると、意外に(?)冷静な人が多くて安心する。いや、2009-12-11を見るとそーでもないな。ネットでは、図の左下の住人も結構な数がいるのかな。

科学者の何割が地球温暖化CO2犯人説はウソだと思っているか

正確な値は、冒頭で紹介したアンケートの集計結果を待つとして、ボクのザックリした印象では、3割くらいではないだろうか?

3割という数字は便利な数字で、常用対数で約1/2だったり、七五三の3だったり、なぜかしっくりくる。

今回のエントリーはとっても非科学的でした。おしまい。

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