宇宙線と気候変動

http://www.asahi.com/science/update/1109/TKY201011080433.html

宮原さん活躍してますねー。彼女はこの分野でキーパーソンになることでしょう。

朝日新聞がこの手の記事を掲載するとは珍しい。

東京大大気海洋研究所と同大宇宙線研究所などが、奈良県室生寺にあり、台風で倒れた樹齢392年の杉の年輪を解析。17〜18世紀に太陽の活動が極めて弱まった時期の炭素の量などから、当時の宇宙線の量を調べた。

17〜18世紀ということは、ちょうどマウンダー極小期ですね。宮原さんたちは、これまでも屋久杉を調べていて同じ結論でした。今回の奈良の室生寺の杉でも同様の結果を得られたというニュースでしょうか。

まだ本論文は読んでいませんが(探し方が悪いのか、見つからない)。

今回の静穏な太陽活動とマウンダー極小期を同列に語れるかどうかは、今後の太陽次第でしょう。現在のところはその徴候はないようです。

追記

プレスリリース→ http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/news-topics/j/news20101109.html

プレスリリースでは、「研究の意義」として次のように述べられています:

また、今回見出したマウンダー極小期における極端・急激な太陽地球環境変動は、近い将来に再び発生する可能性があります。マウンダー極小期のような長期太陽無黒点期は、約200年おきに発生してきたことが分かっています。2008-2009年の太陽は無黒点の時期が比較的長く続き(写真2)、約200年ぶりに弱い活動度となりました。2013年の次の活動のピークに向けて太陽活動は徐々に活発化していますが、過去数十年間の活動ピークに比べて低くなる可能性が高いとされています。さらには、10〜20年先に長期太陽無黒点期に突入する可能性も依然として残っています。長期太陽無黒点期が到来した際には、今回得られたマウンダー極小期における知見が、気候変動の予測に役立つものと期待されます。

http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/news-topics/j/news20101109.html

一方、朝日新聞の記事では次のように述べられています:

太陽活動は2013年をピークに数十年の停滞期を迎えることが予想されており、地球がミニ氷河期に入る可能性もあるという。

http://www.asahi.com/science/update/1109/TKY201011080433.html

プレスリリースでは、朝日新聞の記事のようにミニ氷河期に入る可能性については言及していません。

プレスリリースをするとき、研究者は「何をどこまで言えるか」にとても慎重になります。一字一句とても慎重に文面を練り上げます。共同研究の間で何度も意見調整をしたり、研究機関の広報とも打ち合わせをします。

しかし、マスコミの報道がこれでは、呆れてしまうのです。

正しく報道できないのなら、せめてプレスリリースへのリンクくらい貼っておけ!