ノートパソコンを買った: Dynabook R730

 東芝Dynabook R730/38Aを買った。
 普段は Mac, Windows, Linux, FreeBSD を使っている。OSの選択に全く節操がない。希望のソフトウェアが動作するOSとか、サーバの設定が楽なOSとか、そういう理由によりOSを選択している。こうしているうちに、このようにOSが発散してしまった。

 Windowsはつぎの目的のために必要だ:

プレゼン
プレゼンでは、Windowsマシンを使わなければならない。Macでプレゼンすると、液晶プロジェクタにうまく映らない不具合に遭遇してしまう。学会や研究会での講演では、パソコン切り替え時間も講演時間に含まれるのだ。1秒たりとも時間をロスできない。
モバイル
毎日のようにカバンに入れて出勤する。出張でも持ち歩く。出先でそれなりに作業する必要がある。*1
事務書類
事務から送られてくる書類はMS WordやExcelだ。科研費の申請書もWordだ。これらの書類を迅速に処理するために、Officeが快適に動作する環境が必要だ。Mac版Officeではレイアウトがズレてしまうことがある。文科省・学振の書類でレイアウト崩れは致命的だ。*2

要求仕様

  • なるべく軽いこと。少なくとも1.5kg以下であること。
  • なるべく薄いこと。カバンの中で座りが良いこと。
  • 仕事が快適にできること。キーボードがフルサイズであること。ディスプレイは12〜13インチ程度。
  • DVDドライブを搭載すること。

競合機種

競合モデルで比較してみる。

Dynabook R730 VAIO Z Let's note S ThinkPad X201s
CPU Core i5 Core i5/i7 Core i5/i7 Core i7
液晶 13.3インチ 13.1インチ 12.1インチ 12.1インチ
解像度
(縦横比)
1366×768
(16:9)
1600×900
1920×1080
(16:9)
1280×800
(15:9)
1440x900
(15:9)
質量 1.27kg
1.37kg
1.37kg 1.29kg
1.34kg
1.1kg
厚み 18.3-24.7mm 23.8-32.7mm 23.4-41.4 mm 20.7-35.3mm
駆動時間 10-11時間 6.5-7.5時間 14.5時間 4.1時間

SSDモデル

 各社SSDモデルを出してきている。しかし、まだ高いという印象がある。1年後あたりに、自分で大容量のSSDに換装することを検討することにした。

 Dynabook R730は可搬性において優れている。東芝はSSシリーズを廃止したが、Dynabook R730は軽さではこのクラスで世界一らしい。また、薄さでは他の競合モデルに優っている。

 VAIO Zはディスプレイが凄い。13.1インチ液晶ディスプレイに1920×1080ドットを実機で見ると、字がメチャ小さい!フォントを大きくすれば良いんだけど。あと、ビデオカードを実装しているのは魅力だ。ソニータイマーが気になるところ。

 Let's note Sは性能も良いし、サスガ松下だ。しかし、分厚い筐体とベコベコの天板がなぁ。うーん。

 ThinkPad X201sは本当に迷った。光学ドライブは搭載していないが、期間限定で無料でウルトラベースが付いてくることがある。これを使えば内蔵光学ドライブも不要だ。ただし、筐体が厚いこととバッテリーの駆動時間が短いことが難だ。あと、中華なメーカになってしまったのも残念だ。ThinkPadは日本で開発しているのだが。

最近のノートPCの傾向

 機種選びの過程で感じた、モバイルノートの最近の傾向を記す。
 パソコンの性能は、OS、CPU、メモリ、HDD、ビデオカードで決まるので、カタログ値だけの比較でパフォーマンスは分かる。ただし、使い勝手の面では液晶、キーボード、タッチパッドのインターフェースは重要になる。とくにモバイル環境においては、インターフェースの優劣は重要だ。

液晶の横長化

 近年のパソコンの液晶画面は、縦横比がどんどん横に伸びている。最近では縦横比が16:9の液晶がモバイルノートにも採用されはじめている。対角線の長さを固定した場合、縦横比が横に伸びるほど画素数は減り、安く作ることができる。また、近年のHDの普及により、16:9の製造ラインで作ったほうが割安に作れるということらしい。つまり横長化は作る側の都合だ。
 コード書きをするときには、縦の解像度が重要だ。縦の解像度が大きいほうがより多くのコードを一度に眺めることができるからだ。昨今の過度の横長化は、コード書きには不利になる。Emacsを使うときには、 make-frame-command (C-x 5 2)でバッファを横に2枚並べて作業するのが良いかもしれない。

アイソレーション・キーボード

 アイソレーション・キーボードが増えて来た。好き嫌いが別れるところだろう。最近のアイソレーション・キーボードのブームはMacははじめたらしい。例によって他のメーカーも追従した。
 Dynabook R730 のキーボードもアイソレーション・キーボードだ。RX1やRX2の頃と比べると、タイプしにくい。東芝のやる気のなさが伝わるキーボードだ。
 ちなみに、デスクトップ環境におけるキーボードは、東プレのリアルフォース一択。

インストールしたもの

今後インストール予定

今後の予定

しばらく(1年間程度)使ってからSSDに換装する予定。512GBがどれだけ安くなっているか期待しながら、機会を待つことにする。

*1:しかしながら、長期出張や本気で仕事をする出張ではMacBook Proを持って行く。

*2:今回の科研費申請はMacで書類を書いたが。

次世代スパコン「京」とHPC人材

 少し古いニュースだが、次世代スーパーコンピュータの愛称が「京」に決まった。「きょう」ではなくて「けい」と発音する。これはピーク性能1京Flops (= 10 P Flops)に由来する。以前このスパコン計画は「京速」と呼ばれていたが、これも同じ由来だ。

 「2位じゃダメなんですか!?」というフレーズで記憶に新しい事業仕分けによって、次世代スパコン計画はいったんは「来年度の予算計上の見送りに限りなく近い縮減」という判定が下され、事実上の凍結の危機に陥った。これに学術業界が猛反発した。とくに野依さんをはじめとするノーベル賞受賞学者の反論が功を奏した形で、次世代スーパーコンピュータ計画は復活した。学者バカ(失礼)が多いノーベル賞受賞学者の中で、野依さんのような政治家(失礼)に加勢してもらえると心強い。

京の特徴は人材育成

 次世代スーパーコンピュータ計画の特徴は、人材育成に力が注がれていることだ。これが事業仕分けが原因なのかどうか分からない。脱ハコモノ、コンクリートから人へ*1、という時代の流れかもしれないし、前回の地球シミュレータの反省かもしれない。いずれにしても、人材育成に力が注がれることは良いことだ。

 前回の地球シミュレータに比べると、その違いは顕著だ。地球シミュレータでは気候・気象・固体地球などの「地球」のシミュレーションに多くの計算時間と資金が配分された。地球シミュレータを所有するJAMSTECにとってはウハウハだった*2。しかし、他の分野にも計算時間は配分されたが、資金的には恩恵はほとんどなかった。つまり、「地球シミュレータを使わせてやるけど、金はあげないよ」という方針だった。例えるなら、「戦闘機を買ってあげる。でもパイロットの養成はないよ」という感じだ。これでは、HPC(High Performance Computing)で良い成果を上げることは難しいだろう。

HPCの人材

 次世代スーパーコンピュータには、HPC(High Performance Computing)の人材育成に多くの資金が投入される。しかし、育てるべき人材の不足に、各分野は苦労していると思う。少なくともボクの分野では苦労している。人材を育てようにも、「種」が不足し「畑」も荒廃しているように思える。

 「種」(=大学院生やポスドク)の不足と「畑」(=教育現場)が荒廃していると感じる。

 大学院生とポスドクの数は多い。ポスドク問題を起こすくらいたくさんいる。しかし、HPCの分野で活躍できそうな良質な種となると、稀少である。優秀な大学院生やポスドクは、とても優秀だ。なかにはボクより優秀な人もいる。でも、とても人数が少ない。人的な層が薄いのだ。

 教育現場では、昨今の大学の予算縮減がボディーブローのように効いている。旧帝大の上位校は資金はそれなりに潤沢なのだが、その下はちょっと怪しい感じの雰囲気が漂っている。競争的資金を拡充して、競争力があるところに資金を集中的に投資することは良いことだが、資金配分が過度にアンバランスなのだと思う。また、競争的資金による一時的な資金では、人材育成には不向きなのかもしれない。これらが人的な層の薄さの原因のひとつではないかと考える。

 今回、HPCの人材育成に資金が投資されたことで、この分野の人材不足が徐々に緩和されてることを願っている。次世代スパコンが一時期のバブルで終わらないように、継続してこの分野を育成してゆく必要がある。

追記

地球シミュレータFFT高速フーリエ変換)で世界一になったという話。

 海洋研究開発機構スーパーコンピューター地球シミュレータ」が、気象や気候変動の分野に使われる計算手法で世界一になった。


 同機構が17日発表した。単純な計算を解くランキング「TOP500」では中国のスパコンが初めて1位を獲得し日本は最高で4位だったが、複雑な計算では世界一を奪還した形だ。

 「地球シミュレータ」は2002年に「TOP500」で首位になったが、その後は海外勢におされ今年は54位だった。1位になったのは、「高速フーリエ変換」という計算の速さを競う国際ランキング。昨年3月に更新したシステムが1秒間に12兆回の計算をこなし、米オークリッジ国立研究所スパコンの11兆回をおさえトップに輝いた。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101117-OYT1T00908.htm

そもそも地球シミュレータFFTを高速に計算するために作られたマシンだ。気象やGCMのシミュレーションでは、スペクトル法という方法を用いる。スペクトル法の主要なエンジンはFFTだ。

換言すると、FFTに頼ったスキームで計算している気象分野は、次世代の超並列計算機では性能が出ない。いつまでもFFT頼りの計算に未来はない。

さらに、スペクトル法はスケーラビリティーが悪い。速いスパコンを使っても、計算があまり速くならないのだ。球面調和関数で展開という頭の固い方法から脱却しなければ未来がない。

計算スキームの発達は、そのときの計算機の特性に合わせて発展してきたという歴史がある。気象分野も一皮むけるひつようがあるだろう。だから、新しいスキームを開発している人々にもお金を付けましょうと、応援風にしてこのエントリーを終えることにする。

そんじゃーねー。

*1:スパコンはコンクリート製ではないけど。

*2:ちなみに、理事長は文科省からの天下りのである。

宇宙線と気候変動

http://www.asahi.com/science/update/1109/TKY201011080433.html

宮原さん活躍してますねー。彼女はこの分野でキーパーソンになることでしょう。

朝日新聞がこの手の記事を掲載するとは珍しい。

東京大大気海洋研究所と同大宇宙線研究所などが、奈良県室生寺にあり、台風で倒れた樹齢392年の杉の年輪を解析。17〜18世紀に太陽の活動が極めて弱まった時期の炭素の量などから、当時の宇宙線の量を調べた。

17〜18世紀ということは、ちょうどマウンダー極小期ですね。宮原さんたちは、これまでも屋久杉を調べていて同じ結論でした。今回の奈良の室生寺の杉でも同様の結果を得られたというニュースでしょうか。

まだ本論文は読んでいませんが(探し方が悪いのか、見つからない)。

今回の静穏な太陽活動とマウンダー極小期を同列に語れるかどうかは、今後の太陽次第でしょう。現在のところはその徴候はないようです。

追記

プレスリリース→ http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/news-topics/j/news20101109.html

プレスリリースでは、「研究の意義」として次のように述べられています:

また、今回見出したマウンダー極小期における極端・急激な太陽地球環境変動は、近い将来に再び発生する可能性があります。マウンダー極小期のような長期太陽無黒点期は、約200年おきに発生してきたことが分かっています。2008-2009年の太陽は無黒点の時期が比較的長く続き(写真2)、約200年ぶりに弱い活動度となりました。2013年の次の活動のピークに向けて太陽活動は徐々に活発化していますが、過去数十年間の活動ピークに比べて低くなる可能性が高いとされています。さらには、10〜20年先に長期太陽無黒点期に突入する可能性も依然として残っています。長期太陽無黒点期が到来した際には、今回得られたマウンダー極小期における知見が、気候変動の予測に役立つものと期待されます。

http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/news-topics/j/news20101109.html

一方、朝日新聞の記事では次のように述べられています:

太陽活動は2013年をピークに数十年の停滞期を迎えることが予想されており、地球がミニ氷河期に入る可能性もあるという。

http://www.asahi.com/science/update/1109/TKY201011080433.html

プレスリリースでは、朝日新聞の記事のようにミニ氷河期に入る可能性については言及していません。

プレスリリースをするとき、研究者は「何をどこまで言えるか」にとても慎重になります。一字一句とても慎重に文面を練り上げます。共同研究の間で何度も意見調整をしたり、研究機関の広報とも打ち合わせをします。

しかし、マスコミの報道がこれでは、呆れてしまうのです。

正しく報道できないのなら、せめてプレスリリースへのリンクくらい貼っておけ!

なくなった(><)

はてなブックマーク - 【インフォシーク】Infoseek : 楽天が運営するポータルサイト
このページ、なくなってしまった。
結構重宝していたのに。

だれか、保存してないかなぁ〜。

Fortran90 ユーザもしかして自分だけになってしまったのだろうか、という不安にかられる。
FreeBSDユーザと同様の不安。

外部評価

IACによるIPCCのレビューといったって、結局日本の研究機関の外部評価みたいなもんだよなー。

とは言え、うちの職場は外部評価によって結構改善されているような気がするので、外部評価・内部評価を問わず評価という手段はは有効だと思うのだ。

PDCAサイクルとかやりだすと、それはそれで大変なんだけどね。

一体何を言いたいんだろ。
科研費当たれーってことか。

秋の全国行脚終了

9月は学会、研究会、雑用とずっと出歩いていた。現時点で9月の職場滞在時間はわずか数日だ。今回出席した研究会が「9月死のロード」最後の研究会である。いやー、疲れた疲れた。

今回の研究会は、ちょっと変わった切り口がテーマで、なかなか楽しい研究会だ。共通の切り口を持った研究者が集まって様々な議論をする。これぞ学際だと実感した。招待していただいた研究会の世話人には、感謝!感謝!

この研究会には気候変動とその周辺の人々も参加している。反IPCC派の人が多い。こういう研究会は人脈作りにはうってつけだ。

IPCC派・反IPCC派を問わず、知り合いを作るのは楽しい。とくに、論文が出版される以前の場の雰囲気を知ることは大変重要だ。

今回の意中の人は反IPCC派の実働部隊の隊長のような人。以前、国際会議で一度顔を見た程度だった。今回、講演が終わった後に早速話しかけた。いろいろ突っ込んで聞いてみると、ここ数年の太陽活動極小期のシグナルは、マウンダー極小期のそれとは少し違うようだ。仮に宇宙線が気候をコントロールしているとしても、今回の極小期ではマウンダー極小期のような寒冷期が起きるとは思えない。ちょっと残念だー(笑)。白黒はっきりするのはさらに先になりそう。

また、次回の第5次IPCC評価報告書で、宇宙線で1節が割かれていることについて、どのような感触か聞いてみた。残念ながらIPCCの積極的な言及はなさそうだ。周知の事実だと思うが、IPCCの評価報告書は「わかっていること」に重きを置く。とくに第1作業部会ではその傾向が顕著だ。現状の宇宙線と気候の関係の理解では、IPCC評価報告書でポジティブなことはなさそうだ。僕の感触では、宇宙線だけでなくその周辺の物理学の進展が急務であると感じた。

さて、明日は反IPCCの切り込み隊長(この人は既に知り合い)の講演がある。楽しみだなー。

肝心の僕の講演?もちろん盛況だったよ。

そんじゃーねー。

<追記>
死のロードが終わったと思ってたら、本日もひとつあったのを忘れてた。あー。
</追記>

ウサン臭い環境行政・環境ビジネス

この夏は忙しくてブログの更新もままならない。研究活動で忙しいぶんには幸せなのだが、中には下らない雑用に付き合わされたり、下らない雑用をボク自身がマネジメントしなければならないこともある。まぁ、これも給料分のうちと割りきってやっている。

で、それらの下らない雑用をしていると、ウサン臭い話が耳に入ることがある。とくに、環境行政や環境ビジネスに多いという印象を受ける。たとえば、環境負荷を減らそうとした政策が逆に環境負荷をふやしたり、地球温暖化を防止しようとしたビジネスが逆に地球温暖化を促進したり、という具合だ。純粋な自然科学ならば「間違っている」で終わりだ。しかし、環境行政や環境ビジネスでは、問題はそう単純ではない。

環境行政や環境ビジネスを遂行する現場の人々にとって、科学的正当性は重要ではない。彼らの政策やビジネスを進めることが第一の目的だ。また、ある種の利権が絡んでいることもある。環境利権には悪のイメージがあるかもしれないが、環境問題は純粋な科学ではなく社会問題も含んでいる。社会問題であれば、利権が存在するのは当然である。環境利権に善も悪もない。ただし、科学的な正当性がない行政やビジネスに対しては違和感を覚える。

先日ちょっと訪問した某プロジェクトでは、科学的な検証をせずに、法的な枠組や行政の枠組みを優先して行われていた。僕はその現場を見ただけで、「これはウサン臭い」と思った。帰宅後、いろいろな資料を漁っていると、やはり議論の必要があるという判断に至った。

しかし、僕の立場上、「お前らのやっていることはウサン臭い」なんてことは言えない。相手とのお付き合いが重要だからだ。ここでも環境問題は社会問題になっていると実感する。僕の生活という、吹けば飛ぶような小さな社会の問題だが。

転職でもしたら、思う存分告発(?)したいと思う、今日このごろ。