バスターマシン3号が巨大な理由

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【名古屋のうまい餃子専門店】チャオチャオ名古屋伏見店・池下店で、トップをねらえ!全6話が無料配信されている。アニメ教養課程の必修科目なので、未履修の諸君は是非視聴するように。そして余力があれば、王立宇宙軍も視聴するように。さらに本課程の理解が深まるであろう。

このアニメは相対論をまともにSFネタに使った初めてのアニメだろう。科学考証が面白いという点以外にも各所に様々なネタがあり見所満載のアニメである。そして何より熱い。

劇中に登場するバスターマシン3号はブラックホール爆弾である。バスターマシン3号は、木星を圧縮してコンパクトにしたもので、起爆するためには縮退圧を超えてさらに圧縮してブラックホールにする。

バスターマシン3号は木星を圧縮したものであるが、木星に限らず、すべての質量を持つ物体を圧縮するとブラックホールにすることができる。たとえばミミズだって、オケラだって、アメンボだって、ブラックホールにすることができる。

なんでも潰してブラックホールにしよう

ブラックホールにするためには、シュヴァルツシルト半径より小さく潰す。ぎゅーっと潰す。シュヴァルツシルト半径r_g
r_g = \frac{2GM}{c^2}
で与えられる。ここで、G重力定数Mは質量、cは光速である。直感的には、天体からの脱出速度が光速になる半径である。光すら脱出できないのだからブラックホールなのである。

いろいろな物体についてシュヴァルツシルト半径を計算した結果を下図に示す。縦軸はシュヴァルツシルト半径、横軸は質量である。

物体 シュヴァルツシルト半径 (m)
ヒト 8.915E-26
富士山 1.486E-13
地球 8.876E-03
木星 2.822E+00
太陽 2.955E+03
銀河系 8.866E+15


バスターマシン3号(木星)のシュヴァルツシルト半径は 2.822mである。つまり木星を3m程度まで圧縮すればブラックホールになる。太陽なら3km程度、銀河系なら1光年程度まで潰せば良い。

一方、地球をブラックホールにするには1cm以下まで潰さなければならない。富士山なら原子よりも小さく、ヒトなら10-26mというとてつもないサイズにまで小さくしなければならない。

つまり、天体が重いほどシュヴァルツシルト半径が大きくなり、潰すのが比較的ラクになる。シュヴァルツシルト半径(r_g)が質量(M)に比例しているのだから、当然である。

ブラックホールになりやすさ、なりにくさ

下図の縦軸は物体の半径(r)とシュヴァルツシルト半径(r_g)の比(r/r_g)を示している。つまり「ブラックホールにするためには何倍小さくしなければならないか」である。

この図は、質量が小さいほど、たくさん圧縮しないとブラックホールにならないことを意味している。逆に質量が大きいほど、比較的あまり圧縮しないでも良い(それでもすごい圧縮率だが)。したがって、ブラックホール爆弾を作るには、質量の大きな天体を利用すると良い。しかし、後述するように質量はブラックホールの本質ではない。コンパクトさが本質である。

もちろん、可搬性も考慮する必要がある。太陽をブラックホール爆弾にすると、移動が大変なだけなだけでなく、地球も一緒に移動してしまうので、爆弾としては不向きであろう。

バスターマシン3号はすでに木星を3万分の1に圧縮してある。木星を3万分の1にすると半径は2.38 km である。この半径まで小さくするには、電子の縮退圧を突破して圧縮しなければならない。したがって、バスターマシン3号は中性子の縮退圧で支えられた中性子星と考えることができる(計算してないけど多分そう)。起爆するためには、さらに千分の1程度まで圧縮すればブラックホールになる。

図示した物体の半径(r)とシュヴァルツシルト半径(r_g)の比(r/r_g)は、つぎの関係式で与えられる。

\frac{r}{r_g} = \frac{r c^2}{2GM} \prop \frac{r}{M}

または逆数を考えて、つぎの関係式でも良い。

\frac{r_g}{r} \prop \frac{M}{r}

ブラックホールなどの相対論効果は物体の質量(M)でもなく、小ささ(r)でもなく、密度(M/r^3)でもなく、表面重力の強さ(M/r^2)でもなく、質量と半径の比(M/r)が重要になる。この比が大きいほどブラックホールのような相対論的な効果が重要になる。この指標M/rをコンパクトさと呼ぶ。

質量 O(M)
コンパクト O(M/r)
表面重力 O(M/r^2)
密度 O(M/r^3)

しばしば、ブラックホールになりやすいのは、「重い天体」や「高密度な天体」、「重力が強い天体」と言われることが多いが、それは誤りである。正確いは、コンパクトな天体ブラックホールになりやすい。

ブラックホール爆弾を作るには、コンパクトさを考慮して天体を選定するとよい。

ブラックホールになったからといって

ブラックホール爆弾が起爆して、木星ブラックホールになったからといって、銀河系中心部を全て飲み込むということはない。実際、銀河系の中心には太陽の数百万倍の質量を持つブラックホールがあるといわれているが、銀河系中心部はいたって平穏である。

ブラックホールになって重力が強力になるのは、ブラックホール近傍だけである。遠方ではブラックホールであろうが普通の星であろうが、重力は質量に比例している。したがって、たとえばある日太陽がブラックホールになったとしても、地球が吸い込まれることはない。

こう言ってしまうと、ブラックホール爆弾の意図を全て否定してしまうことなる。でも、一般には、

ブラックホール=すごい重力

と思われているのだから、SFとしてはよく出来ていると思う。