セシウムが群馬県まで届いていた件は予測されていた

 朝日新聞の記事が話題になっている。福島第一原発からのセシウム群馬県にまで飛散していたという。

 文部科学省は27日、航空機を使って測定した放射性セシウムの沈着量について、群馬県の汚染マップを公表した。東京電力福島第一原発事故によって飛散した汚染の帯が、250キロを超えて広がっていることが分かった。(後略)

http://www.asahi.com/national/update/0927/TKY201109270600.html

文部科学省の発表

 新聞記事のもとになった文科省の発表はこれ:
文部科学省及び群馬県による航空機モニタリングの測定結果について(平成23年9月27日)(PDF:1500KB)

 記事に掲載されたもとの図はこれ(セシウム134と137の沈着量の合計):

 震災直後から米国DOEがやっていたのと同様の航空機モニタリングによる調査結果である。今回は、群馬県の調査結果が追加され、群馬県ホットスポットが存在することが確認された。上図はセシウム134と137の合計だが、セシウム134とセシウム137の個別の分布も同様の分布であった。

 はやく首都圏も発表してほしい。後回しにするのは大人の事情でしょうか?*1

国立環境研究所のシミュレーション

 上のセシウム134/137の分布は、環境研のシミュレーション結果とそっくり。環境研のシミュレーションは以前のエントリーで紹介したが、今回あらためて紹介する。下図はシミュレーションで再現されたセシウム137の積算沈着量である。

 群馬県にまでセシウム137が届いてる。群馬県ホットスポットの分布が見事にシミュレーションで再現されていた。環境研の本気を見た気がする。ちなみに、原研のWSPEEDIによるシミュレーションでも北関東のホットスポットが再現されているが、航空機モニタリングの結果とはあまり一致していない。環境研のシミュレーションに軍配があがる。大気シミュレーションでは、環境研に一日の長がある。
 環境研のシミュレーションは沈着量の絶対値もうまく再現している。航空機モニタリングとシミュレーションでの単位換算は、 kBq / m^2 = 10^3 M Bq / km^2である。したがって、航空機モニタリングでくすんだ緑色の値(30 kBq/m2)が、シミュレーションの緑色の値(30 ×103 MBq/km2)に対応する*2

詳細な資料:

心配なホットスポット

 環境研のシミュレーションは、もうひとつ気になるホットスポットの存在を示唆している。それは、東京都西部の山梨県との県境、奥多摩である(下図参照)。ここには東京都の水道水源のひとつ、多摩川水系の取水口(奥多摩湖)がある。また、横浜市の水源である山梨県道志村も近い。首都圏の水道水が心配である。

 水道水の観点では、今回の群馬県で確認されたホットスポットも、東京都の水道水に与える影響が心配だ。ホットスポットは水上・奥利根付近に存在する。ここは利根川の水源である。春の雪解けの季節が心配である。いずれにしても、浄水場のモニタリングから目が離せない。

*1:文部科学省の発表によると、東京都と神奈川県の航空機モニタリングは9月14日から行われた模様。通常、調査から1ヶ月程度で結果が発表されるので、首都圏の汚染状況が判明するのは10月中旬と予想される。

*2:このエントリーに掲載したのはセシウム134と137の合計の沈着量である。航空機モニタリングとシミュレーションを比較するためには、セシウム137だけの沈着量の分布を比較するべし。